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10句選 選句者 9人
橋 本 幹 夫 選
   母なる木風に託して木の実降る/山口美琴
    団栗を照らす木洩れ日山の道/木村宏一
     紅葉且散る大仏の空晴れて/渡邊春生
    しづしづと山下り来し龍田姫/池下よし子
   ぐい飲みの陶師を褒めて今年酒/清水恵山
      夕闇を早めて稲架の堆し/瀬尾睦夫
     秋耕の人はそれぞれ千枚田/田村公平
     靴底にまだ銀杏の臭みあり/筒井省司
    身に入むや辿る歴史の転害門/後藤允孝
      露寒や余熱の残る登り窯/石崎そうびん
瀬 尾 睦 夫 選
    酢造りの匂ふ土蔵のなまこ壁/清水恵山
    運動会風に火薬のにほひかな/池下よし子
     新調の幟はためく走り蕎麦/田村公平
      秋天やピエロ軽々宙返り/石崎そうびん
     大切に研いで光れる今年米/橋本幹夫
     秋灯に漏れくる笑ひ巫女溜/渡邉春生
    身に入むや歴史を語る転害門/後藤允孝
    山の辺の秋をならべて無人店/木村宏一
コスモスに負けぬ背伸びやピースの子/山口美琴
      立札を覆ひ隠して泡立草/筒井省司
森 戸 し ゆ じ 選
     新調の幟はためく走り蕎麦/田村公平
     自分似を探す羅漢や秋の暮/同
    山の辺の秋をならべて無人店/木村宏一
   リアルさに一声かける案山子路/同
コスモスに負けぬ背伸びやピースの子/山口美琴
   母なる木風に託して木の実降る/同
    酢造りの匂ふ土蔵のなまこ壁/清水恵山
    紅葉且つ散る大仏の空晴れて/渡邉春生
     また一つ年を重ねて菊の秋/瀬尾睦夫
  夜が明けて十日の菊となりにけり/駒田暉風
池 下 よ し 子 選
    山の辺の秋をならべて無人店/木村宏一
     ほつれたる光悦寺垣萩の風/石崎そうびん
  秋天や風が引つ張るアドバルーン/橋本幹夫
   母なる木風に託して木の葉降る/山口美琴
     単線の眺めて飽きぬ窓の秋/清水恵山
     一畝の菜虫を捕りて空仰ぐ/筒井省司
      回し注ぐ玉露の滴暮の秋/田村公平
 草じらみ島より出でんと飛びつけり/渡邊春生
       秋雨や苔青々と秋篠寺/後藤允孝
     また一つ年を重ねて菊の秋/瀬尾睦夫
清 水 恵 山 選
    金柑を含んで小言止まりけり/木村宏一
    赤のまま肩を寄せあふ道祖神/石崎そうびん
      落日の風は黄金の稲架襖/橋本幹夫
      水澄みて映す柳や高瀬川/池下よしこ
      強風に負けぬ力や秋の蝶/山口美琴
      立札を覆ひ隠して泡立草/筒井省司
    我が顔を探し羅漢に秋惜しむ/田村公平
      浮雲の上に浮雲蛇笏の忌/渡邉春夫
     宅配車秋の夕日を運び込み/後藤允孝
     また一つ年を重ねて菊の秋/瀬尾睦夫
木 村 宏 一 選
   退院のたびごとに知る老いの秋/森戸しうじ
   ぐい飲みの陶師を褒めて今年酒/清水恵山
    運動会風に火薬のにほいかな/池下よし子
     新調の幟はためく走り蕎麦/田村公平
  秋風や風が引つ張るアドバルーン/橋本幹夫
     秋風に漏れくる笑ひ巫女留/渡邉春生
    身に入むや歴史を語る転害門/後藤充孝
     また一つ年を重ねて菊の秋/瀬尾睦夫
コスモスに負けぬ背伸びやピースの子/山口美琴
     一畝の菜虫を捕りて空仰ぐ/筒井省司
山 口 美 琴 選
   リアルさに一声かける案山子路/木村宏一
    団栗を照らす木漏れ日山の道/同 
    酢造りの匂う土蔵のなまこ壁/清水恵三
    運動会風に火薬のにほひかな/池下よし子
     新調の幟はためく走り蕎麦/田村公平
  隣家よりショパンのワルツ菊日和/石崎そうびん
     大切に研いで光れる今年米/橋本幹夫
 草じらみ島より出でんと飛びつけり/渡邉春生
     また一つ年を重ねて菊の秋/瀬尾睦夫
    香り消え木犀丸く刈られをり/筒井省司
筒 井 省 司 選 
    酢造りの匂ふ土蔵のなまこ壁/清水恵山
*ひつじ*田の淡きみどりや伊勢平野/山口美琴
     秋高し轟く昭和の汽笛かな/田村公平
     また一つ年を重ねて菊の秋/瀬尾睦夫
    秋刀魚焼く妻は昔の顔となり/渡邉春生
       秋雨や苔青々と秋篠寺/後藤充孝
    団栗を照らす木洩れ日山の道/木村宏一
     晩年の父の一徹万年青の実/橋本幹夫
     この町の小さき天守秋高し/池下よしこ
    赤のまま肩を寄せ合う道祖神/石崎そうびん
田 村 公 平 選
        谺する川中島の威銃/清水恵山
   ぐい飲みの陶師を褒めて今年酒/同
      老い二人労り歩く秋日和/同
    運動会風に火薬のにほひかな/池下よし子
     秋思ふと志功の女人仏めく/同
      秋天やピエロ軽々宙返り/石崎そうびん
   林檎もぐクラスメートの片笑窪/橋本幹夫
    見舞客ともに見てゐる秋の暮/森戸しゆじ
     一畝の菜虫を捕りて空仰ぐ/筒井省司
   母なる木風に託して木の実降る/山口美琴