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10句選 選句者 10人
橋 本 幹 夫 選 
     新緑を映して峡の淀みかな/木村宏一
       空蒼く白鷺踊る里の朝/筒井省司
    藤棚の下に荷を解く屋台かな/瀬尾睦夫
     五平餅添へて茶店の初山女/清水恵山
     山河なき砂丘の面夏立ちぬ/後藤允孝
       決着の住民投票青葉雨/池下よし子
     絹莢の色鮮やかや玉子とじ/山口美琴
   再会の樹下のやくそく花は葉に/白根鈴音
      麦飯や八人部屋の学生寮/田村公平
  春の蚊や死にぞこなひの俺がゐる/橋本幹史
 
池 下 よ し 子 選 
   軽トラの軽やかに来て田水張る/森戸しうじ
      代田澄む上弦の月輝けり/木村宏一
      山影の迫りくる宿夕河鹿/石崎そうびん
      威勢よき女の競りや初鰹/橋本幹夫
    水文字の貴船みくじや若葉風/山口美琴
     連山を遠くに望み麦を刈る/清水恵山
      百畳の絵馬堂飾る白牡丹/田村公平
     石ひとつ一つが遺跡柿の花/瀬尾睦夫
      白砂に辛きを潜め花山葵/白根鈴音
    匂ひ立つ大地の息吹五月来る/橋本幹史
 
清 水 恵 山 選 
     濃く淡く目指す山頂若葉風/木村宏一
      竹刀振る少年の眼や青嵐/石崎そうびん
     瓜苗や既に父越す子の背丈/橋本幹夫
   かけつこの子等遠ざかる青葉道/池下よし子
     静かなる吉野の山や新樹光/山口美琴
    すひかづら咲く生垣に浜の風/筒井省司
     遠洋へ家族が託す新茶かな/田村公平
      天空に大樹を広げ樟若葉/後藤允孝
     石一つひとつが遺跡柿の花/瀬尾睦夫
  飲むほどに現の証拠となりにけり/白根鈴音
 
瀬 尾 睦 夫 選
      代田澄む上弦の月輝けり/木村宏一
       飛沫あげ筧の水や青嵐/石崎そうびん
    はにかんで麦笛吹ける転入児/橋本幹夫
   サングラスかけて旅路の憚らず/池下よし子
    水文字の貴船みくじや若葉風/山口美琴
かはほりやいつしか子らのゐなくなり/渡邉春生
      夏めくや投網繕ふ父の皺/後藤允孝
   子供の日根つから勉強嫌ひの子/橋本幹史
   青木の葉隈なく落ちて夏に入る/田村公平
     連山を遠くに望み麦を刈る/清水恵山
森 戸 し ゆ じ 選 
   みたらいの渓踏み入りて新樹冷/木村宏一
      山影の迫りくる宿夕河鹿/石崎そうびん
      夏霞森の木立を包みをり/志村万香
 あかんべの子を追ひかけて春暮るる/池下よし子
    水文字の貴船みくじや若葉風/山口美琴
    見栄えよく軽き藜の杖を買ふ/清水恵山
   端艇に寄せ来る卯浪割つて漕ぐ/田村公平
      夏めくや投網繕ふ父の皺/後藤允孝
   うばら咲く葉陰に棘を隠し持ち/白根鈴音
     霊峰の天下御免の新茶かな/橋本幹史
 
木 村 宏 一 選 
   軽トラの軽やかに来て田水張る/森戸しゆじ
    はにかんで麦笛吹ける転入児/橋本幹夫
   かけつこの子等遠ざかる青葉道/池下よし子
    水文字の貴船みくじや若葉風/山口美琴
     連山を遠くに望み麦を刈る/清水恵山
    白球を乗せて気まぐれ若葉風/田村公平
かはほりやいつしか子らのゐなくなり/渡邉晴生
     夏めくや投げ網繕ふ父の皺/後藤充孝
      祭足袋土の感触確かむる/瀬尾睦夫
      白妙に辛さを潜め花山葵/白根鈴音
 
筒 井 省 司 選 
   スーパーの試飲香りし新茶かな/山口美琴
      祭足袋土の感触確かむる/瀬尾睦夫
      夏霞森の木立を包みをり/志村万香
      百畳の絵馬堂飾る白牡丹/田村公平
     江戸前の釣場へ急ぐ穴子舟/清水恵山
    新緑の山たっぷりと陽の匂い/橋本幹夫
       柿若葉庭一番の古き株/石川順一
       柿若葉鼻息荒き調教場/石崎そうびん
      田代澄む上弦の月輝けり/木村宏一
   加減よき夫が支度の冷さうめん/池下よし子
山 口 美 琴 選 
     濃く淡く目指す山頂若葉風/木村宏一
      山影の迫りくる宿夕河鹿/石崎そうびん
    はにかんで麦笛吹ける転入児/橋本幹夫
   職退きし夫とも慣れて豆ごはん/池下よし子
    走り茶の最後の一滴まで薫る/清水恵山
     合宿の薄きカーテン明易し/田村公平
    谷若葉風に乗り来る和讃かな/渡邉春生
    風誘ふ重き薔薇の香包みけり/後藤允孝
     石一つひとつが遺跡柿の花/瀬尾睦夫
    匂ひ立つ大地の息吹五月来る/橋本幹史
 
田 村 公 平 選
 アザレアを挿して明るき部屋となる/清水恵山
   思い出の話は尽きず古茶のこく/清水恵山
      不器用に生きて此の方夏/鈴音
     からからと賽の河原の風車/鈴音
     古書店の読めぬ看板夕薄暑/そうびん
      卯浪寄す突堤長し沖暗し/そうびん
    園児らの散歩コースや麦の秋/山口美琴
     金魚糶る符丁の指の札踊る/後藤允孝
   芍薬の活けてたちまち花ひろぐ/池下よし子
      どんやくや玄界灘に船灯/橋本幹夫
 
石 川 順 一 選 
  猪口ほどの湯のみ新茶の試飲かな/春生
  薔薇の名を覚えて薔薇を忘れたり/春生
  塗りたくるモダンアートや夏近し/池下よし子
      結葉や宮の奥なす不動堂/池下よし子
   子供の日根つから勉強嫌ひの子/橋本幹史
  何時までも水辺離れぬ初夏の子等/清水恵山
      卯浪寄す突堤長し沖暗し/そうびん
   親も子も伊賀忍者なる夏日かな/山口美琴
    木堂忌話せば長くなるけれど/橋本幹夫
    開発が遅れ見る間に草いきれ/田村公平