10句選 選句者 9人
橋 本 幹 夫 選
春の野や行く先々に鳥の声/清水恵山
春の川渡る浅瀬の石伝ひ/森戸しゆじ
老いを打つ足の痛みや寒戻る/木村宏一
小櫃堰水面を渡る初音かな/筒井省司
暖かや恋路が浜の椰子の歌碑/後藤允孝
暖かや心の扉開けてみる/山口美琴
いかなごや路地に醤の匂ひ立つ/池下よし子
花の雨相合傘の透き通る/渡邊春生
アネモネや眠たき音に鳴るビオラ/瀬尾睦夫
薄墨の桜ゆつくり蕾もつ/志村万香
後
藤 允 孝 選
卒業やよどまず校歌うたひ切る/森戸しゆじ
手まねきも風のリズムや雪柳/木村宏一
北限の猿の想へる春田かな/橋本幹夫
うるうると春満月のいま天心/池下よし子
草餅や母の手作り香の遠き/山口美琴
豊作の音の聞ゆる種袋/清水恵山
純白の辛夷傷めて風去りぬ/筒井省司
ものの芽は花咲く前の力瘤/田村公平
風光る九十歳の畑仕事/渡辺春生
また一つ歳を増やして雛納/瀬尾睦夫
池
下 よ し 子 選
春の川渡る浅瀬の石伝ひ/森戸しゆじ
老いを打つ足の痛みや寒戻る/木村宏一
湯の宿の雪解雫に目覚めをり/石崎そうびん
北窓を開けて紫煙を野に放つ/橋本幹夫
暖かや心の扉開けてみる/山口美琴
たつプリと水を注ぎて苗木植う/清水恵山
復唱の操舵号令風光る/田村公平
燕来る砲門今も海を向き/渡邊春生
引く波の渚に拾ふさくら貝/後藤孝光
どなたから供養の花や入彼岸/瀬尾睦夫
瀬 尾 睦 夫 選
卒業やよどまず校歌うたひ切る/森戸しゆじ
県境の村の廃れて雪解川/そうびん
北窓を開けて紫煙を野に放つ/橋本幹夫
幾たびも列車止めたる比良八荒/清水恵山
クロッカス妻に花名を教はりぬ/筒井省司
啓蟄のグランド均す野球の子/田村公平
風光る九十歳の畑仕事/渡邉春生
父のごとときには怒る春の海/後藤允孝
卒業子希望大きく寮に入る/山口美琴
春の闇瀬音たよりの峡の道/木村宏一
筒
井 省 司 選
はらわたの苦味の旨き目刺しかな/清水恵山
春泥を跳ぶ新しきスニーカー/瀬尾睦夫
引く波の渚に拾ふさくら貝/後藤充孝
春雪やパワーショベルの駆動音/石崎そうびん
垂直に挙げて卒業証書受く/橋本幹夫
啓蟄や焼野原より七十年/渡邉春生
麦踏んで畝のかなたの夕日かな/田村公平
行進のバトンガールや風光る/池下よしこ
桜咲き旅を誘ひしパンフかな/山口美琴
啓蟄や思ひはいまだ胸のうち/木村宏一
森
戸 し ゆ じ 選
春の闇瀬音たよりの峡の道/木村宏一
どれもこれも明るき絵柄種袋/石崎そうびん
紅椿一花寂しく落ちにけり/志村万香
うるうると春満月のいま天心/池下よし子
陶器雛それぞれ旅の想ひあり/山口美琴
復唱の操舵号令風光る/田村公平
躑躅燃ゆ開拓村の無縁墓/渡邉春生
燕来る砲門今も海を向き/渡邉春生
どなたから供養の花や入彼岸/瀬尾睦夫
そこかしこ沈丁香る住宅地/筒井省司
清 水 恵 山 選
奔流の音のなかなる雪解村/石崎そうびん
春の闇瀬音たよりの峡の道/木村宏一
幼子の伸び競ひ合ふ菖蒲の芽/橋本幹夫
いくばくの墓石一望山笑ふ/池下よし子
子育てもそろそろ終へし桜の木/山口美琴
春雪の水と成り行く速さかな/石川順一
咲きみちて玄関狭し桜草/渡邊春生
麦踏んで畝のかなたの夕日かな/田村公平
沈丁の香りをつれて風抜ける/後藤允孝
純白の辛夷傷めて風去りぬ/筒井省司
山
口 美 琴 選
春の川渡る浅瀬の石伝ひ/森戸しゆじ
春の闇瀬音たよりの峡の道/木村宏一
県境の村の廃れて雪解川/石崎そうびん
球春や誰に有利の浜つ風/橋本幹夫
うるうると春満月のいま天心/池下よし子
小さな掌に四葉のクローバ見せに来る/清水恵山
そこかしこ沈丁香る住宅地/筒井省二
啓蟄のグランド均す野球の子/田村公平
燕来る砲門今も海を向き/渡邉春生
引く波の渚に拾ふさくら貝/後藤允孝
木
村 宏 一 選
卒業やよどまず校歌うたひ切る/森戸しうじ
県境の村の廃れて雪解川/石崎そうびん
北窓を開けて紫煙を野に放つ/橋本幹夫
いかなごや路地に醤の匂ひ立つ/池下よし子
暖かや心の扉開けてみる/山口美琴
豊作の音の聞ゆる種袋/清水恵山
純白の辛夷傷めて風去りぬ/筒井省司
麦踏んで畝のかなたの夕日かな/田村公平
引く波の渚に拾ふさくら貝/後藤允孝
逞しく回る水車や春の水/瀬尾睦夫