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10句選 選句者11人
20/2014b/07
橋 本 幹 夫 選
    人間といふ虫になる蚊帳の中 白根鈴音
      風遊ぶ丹波城下の軒風鈴 池下よし子
       石穿ち命の水の滴りて 瀬尾睦夫
    風の中吊りし風鈴の響き合ふ 森戸しゆじ
     夏帽子かぶり働き盛りかな 渡邊春生
       夏座敷一筆箋の墨香る 清水恵山
      葛餅や宇陀の老舗の深庇 石崎そうびん
   凌霄花夕日に解けて散りゆけり 山口美琴
    潮焼に背中がもえて眠れぬ夜 後藤允孝
     白玉やそぞろ歩きの京の街 木村宏一
 
池下よし子 選 
      大川に手締いくども船祭 木村宏一
     老鶯や伊賀と甲賀は谷伝ひ 石崎そうびん
       海の日や満艦飾の大湊 橋本幹夫
     夏薔薇雨深まれば色冴えて 志村万香
     仙人掌や鎌首のばし一夜花 山口美琴
      水貝の一つ一つに磯香る 清水恵山
     高原の早立ちの宿夏炉焚く 山縣伸義
       石穿ち命の水の滴りて 瀬尾睦夫
   憂きこともさらりと流し髪洗ふ 白根鈴音
   潮焼けに背中がもえて眠れぬ夜 後藤允孝
 
瀬 尾 睦 夫 選
     炎帝の地軸が少し動くとき 橋本幹夫
 手花火やいつまで揺るる火のしずく 池下よし子
      羅を脱げば読経の僧若し 清水恵山
   梅雨明けや軽くなりたる朝の風 木村 宏一
   束の間の日射しもらひて蝉時雨 山口 美琴
     菜園といふも一坪茄子の花 そうびん
      黄昏て海の濃淡暑気払ひ 後藤 允孝
     ひっそりと雨の宿りの夏菫 万香
   しがみ付く葉に空蝉の風吹かれ 石川順一
     星はじく線香花火懐かしき 筒井省司
 
森戸しゆじ 選 
     山の駅乗り込む蝉の合唱団 木村宏一
    片陰の尽きて古町途切れけり 石崎そうびん
    木登りの蟻に大きな葉が迫る 石川順一
     青鯖の塩たつぷりと船場汁 池下よし子
     仙人掌や鎌首のばし一夜花 山口美琴
     夏草を刈られ鎮座の道祖神 筒井省司
    十薬を引いて無口の庭師かな 田村公平
     高原の早立ちの宿夏炉焚く 山縣伸義
    今日の日の誰にも負けぬ兜虫 橋本幹史
   憂きこともさらりと流し髪洗ふ 白根鈴音
清 水 恵 山 選
     老鶯や伊賀と甲賀は谷伝ひ そうびん
    梅雨明や軽くなりたる朝の風 木村宏一
  毛虫這ふやがて綺麗に舞ふまでは 橋本幹夫
     噴水や大正ロマン街なごり 池下よし子
      片陰を選んで歩む猫の道 山口美琴
     空蝉や精一杯に抜けゐたり 後藤允孝
   リハビリの妻を送りし大暑かな 筒井省司
    夕風や蚊遣りの煙身にまとひ 瀬尾睦夫
    蝉しぐれ母の咎めか耳を打つ 鈴音
       夏草へ反省会の腰下す 田村公平
 
木 村 宏 一 選 
    風の中吊りし風鈴の響き合ふ 森戸しゆじ
     遠き日の勤労奉仕草いきれ 石崎そうびん
    争乱は何時も何処かで雲の峰 橋本幹夫
    花火師のなにはを焦す大舞台 池下よし子
   凌霄花夕日に解けて散りゆけり 山口美琴
       夏座敷一筆箋の墨香る 清水恵山
     夏草を刈られ鎮座の道祖神 筒井省司
     高原の早立ちの宿夏炉焚く 山縣伸義
   憂きこともさらりと流し髪洗ふ 白根鈴音
 
山 縣 伸 義 選
      葛餅や宇陀の老舗の深庇 そうびん
      酒弱き父でありしよ冷奴 同
     菜園といふも一坪茄子の花 同
    頑なに生き通すこと盂蘭盆会 森戸しゆじ
   盆近しこの世に居たしもう少し 同
     朱に染めし海の絨毯大西日 田村公平
      初蝉や杜の階段登り来て 筒井省司
  冷え麦茶どつしりやかん座りをり 木村宏一
   瓜番の夜明け眠たくなりにけり 橋本幹夫
      涼しさや漁火並ぶ水平線 清水恵山
 
筒 井 省 司 選 
    片陰の尽きて古町途切れけり 石崎そうびん
     菜園といふも一坪茄子の花 同
    十薬を引いて無口の庭師かな 田村公平
  ブラインド一気に降ろし西日絶つ 後藤充孝
     冷酒に亭主自慢の切子かな 瀬尾睦夫
      蝉時雨無賃乗車や山の駅 山口美琴
   駅前のシャッター通り夜店立つ 清水恵山
     登り来て天守仰ぐや夏帽子 池下よしこ
     山の駅乗り込む蝉の合唱団 木村宏一
    風鈴に窓を小さく開けにけり 山縣伸義

 
後 藤 允 孝 選 
     花楓疲れた足をしばし停め 駒田暉風
     遠き日の勤労奉仕草いきれ 石崎そうびん
     晩夏光風に任せて櫂を漕ぐ 橋本幹夫
    炎帝に心急かるる六十路かな 志村万香
    捩花の凛と右巻きひだりまき 池下よし子
   胡瓜もみ手に香残して夕餉なり 山口美琴
       夏座敷一筆箋の墨香る 清水恵山
      水貝の一つ一つに磯香る 清水恵山
     夏草を刈られ鎮座の道祖神 筒井省司
     能面を外して汗の太郎冠者 瀬尾睦夫
 
山 口 美 琴 選 
    梅雨明や軽くなりたる朝の風 木村宏一
     遠き日の勤労奉仕草いきれ 石崎そうびん
     夏薔薇雨深まれば色冴えて 志村万香
      百日紅一樹明るき診療所 池下よし子
       夏座敷一筆箋の墨香る 清水恵山
    争乱は何時も何処かで雲の峰 橋本幹夫
     夏草を刈られ鎮座の道祖神 筒井省司
  ブラインド一気に降ろし西日断つ 後藤充孝
     高原の早立ちの宿夏炉焚く 山縣伸義
   憂きこともさらりと流し髪洗ふ 白根鈴音
 
石 川 順 一 選 
       親方の鋏が暴く木下闇 田村公平
   訛りなど直す気は無し鱧を食ぶ 田村公平
   冥加ある説法聞いて蚊に刺さる 後藤允孝
  ブラインド一気に下ろし西日断つ 後藤允孝
    ジッポーに油を注ぎ毛虫焼く 橋本幹夫
      葛餅や大正琴の流れくる 清水恵山
     (作者による訂正⇒葛餅や大正演歌の流れくる)
     一日を三で割られて昼寝覚 鈴音
      片蔭を選んで歩む猫の道 山口美琴
    八戸の便り揺るるやイカ風鈴 池下よし子
      公園に隠密集う草刈り日 筒井省司