石清水八幡宮一帯吟行記
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平成19年6月10日  門田窓城
 引鶴恒例の6月吟行は10日、恰も時の記念日である。暦の梅雨入りを明日にひかえて、曇ってはいるが雨の心配はなく少々暑いが吟行日和となった。

 私はモノレール、京阪電車と乗り継いで9時半頃八幡市駅に着く、集合は10時頃、参詣ルートは自由となっている。

 先生の一団と共にケーブルで登ることにしていたので、駅周辺、表参道を覗いて見る。駅前を行くと観光案内所があるが閉っている。まだ早いらしい。
 
 駅前の男山を望む広場の巾央には、大竹を斜めに切って組み合せたモニュメントがあり、上部にはエジソン電球の模型が高く掲げられていて、歩遭の横にはエジソン胸像もしゃきっと。

 一の鳥居から八幡宮の御旅所の頓宮へ、眞っ直ぐに抜けると二の鳥居を経て、石段の続く表参道に出る。八幡宮本殿へは40分は優にかかる、かなりきつい行程である。

 頓宮を通り抜けると、左手に木造の由緒ありげな太鼓橋が見え、その間近かに白壁の蔵が昔のまま残されている。川岸へ下るとさざ波公園とあり、整備されている。

 川は、かの有名な放生川で、岸の紫陽花が淡い彩の毬を競っている。駅へ戻るとメンバーが揃ってきていて、表参道を行く人達は出発して行った。

 吾々は、ケーブルカーでゆっくり登る。紫陽花の続く上には男山の象徴的竹林が若竹を美しく演出し、樹木は緑を濃くしてきている。4、5分で男山山上駅である。
 
 駅を左へ出て道なりに大きく廻ると展望台、これ以上なき視界で、心晴ればれの涼しさである。

 青楓が天を覆い、奥の崖っぷちの上には谷崎潤一郎の文学碑が所狭しと据っている。今日は夏霞で正面の京の市街は見えないが、比叡山四明ヶ獄や愛宕山がうっすらとそれらしく望む事ができる。
 
 左手の下は八幡市で桂川、宇治川、木津川の合流点を俯瞰し、右手は宇治でその右には流橋があると掲示されている。

紫陽花や山気濃ければ色も又 佐知
  
青楓でんと芦刈文学碑 窓城
  
薮蚊まづ払ひて読める碑文かな ゆたか

 展望台の緑陰からの眺望を楽しんで、又もとのケーブルで参道に戻る。男山の瞼しい山腹を切り取って道が作られている。

 見上げるも見下ろすも竹、竹、竹で空も目視の遠景も封じられている。そして丁度皮を脱いでいる大きな若竹が随所に見掛けられる。

 余程手入れが行き届いているらしい。見上げていると時折竹落葉が降ってくる。
 
 気がついてみると、竹林の斜面は竹落葉を重ね、参道にも、その切り立った壁面にも散りかっていて風情である。

 勿論この景はこの道に限った事ではなく、他の参道も共通である事は容易に想像できるし、句会に於いて証明された。
 
天空へ競ふ八幡の今年竹 舟津
  
どの遣を行くも若竹男山 律子
  
今年竹裾なる皮はまだ脱がず 木賊

 このケーブル参遣をしばらく行くと参道の左側に木の鳥居があって灯篭が一対、すぐ前の杉の木に注連がしてある。

 取り敢えず二礼二拍手一礼。後に本殿案内所でお聞きしたところ伊勢神宮遥拝所との事。拝んできて良かった。

 又この蓬拝所の道の反対側には細橋と云う石橋が滴りに架けてあって、常に四隅に榊を建て注連を張って往来を禁じていると云う。石清水の上流であるとのことでした。
 
 竹落葉や緑陰のケーブル参道も裏参道と合流し、更に進むと石畳の登り道となり、急に視界が広くなって表参道の広小路である。
 
 左の石灯篭の林立の先には三の鳥居があり神馬舎である。その圧は松花堂跡、更に奥には石清水杜があって、玄冬にも氷らず大旱にも涸れない石清水井がある。
 表参道の正面は南総門で通り抜けると白砂の境内に朱造りの綺羅びやかな楼門が廻廊をつないで聲え立つ。
 
 その奥が御本殿であるが今は、修復中の為ここで参拝する。静かな境内に拍手が響く。心中より厳かな気分になる。

 石清水八幡宮の御祭神は、中御前が譽田別尊、即ち応神天皇。西御前は比淘蜷_。東御前は神功皇后で応神天皇の御母である。
 
 応神天皇は文字を漿励し、殖産興業を盛んにし、数多の池溝を開いて灌漑の便を計り、大船を造られて交通の道をも開かれた。

 よって御神徳は厄除開運と共に、我が国文教の祖、殖産の守護神として崇められてきた。
 
 創建は宇佐八幡大神の御託宣によって六宇の宝殿を建立し、西暦859年三所の神璽を奉安せられたのが起原であると略記は記している。

 現在の社殿は寛永8年三代将軍家光公の造営、落成になったもので輪奐の美を極むと、尚本殿、弊殿、舞殿、楼門、廻廊、武内杜は重要文化財の指定を受け、特に本殿の雨樋は黄金樋と称し、織田信長の寄進によると略記にあります。
 
男山中腹に湧く岩清水 徹
  
詣で遣緑陰つづき坂がかり 寿美
  
滴りの音を訪ねて竹の径 雄次郎
 
 男山八幡宮と云えば竹であり、エジソンである。表参道の南総門の点前を少し下ると、ちよっとした広場があり、すぐのところはボーイスカウト顕彰碑で、奥まった処に眞っ黒の石の横広のエジソン碑が、若竹の明るい早緑の林を背に建っている。

 横文字の英文と日本語で「発明は1%の霊感と99%の努力から成る」と刻まれている。

 発明王エジソンが炭化木綿糸による炭素フィラメント電球を発明したのは879年で、ほぼ40時間程しかもたなかった。

 当時としては画期的な長時間であったが、更なる改良に努力し、さまざまな材料で実験を重ねた。
 
 世界各地に人を派遣して最良繊維を探し求め、日本にはムーアと云う人が来られて、さまざまな種類のさまざまな成長期の竹が送られた。
 
 その実験の結果、この男山の眞竹が最高との結果で折紙がつき、この竹をフィラメントに使った電球は約千時間輝き続けたと報告されている。
 
 その後1894年にセルローズにより新しいフィラメントが発明されるまで、約10数年間この男山の竹が逢かアメリカの家庭や職場、街頭を明るく照らしていたのです。誇らしい実績ではありませんか。

エジソンの碑辺に撓みし今年竹 ゆたか
  
山法師咲きて煤めくエジソン碑 不二子
  
万緑に黒光りしてエジソン碑 宮子
 
 散策の最後の鑑賞は山法師で、少し離れたエジソン碑の前の緑陰のベンチが恰好の遠見席であった。

 昼食と句会場は清峯殿で、神官の研修センターでもあるらしい。食堂へ出向くと若い神官と同室で、セルフサービス、静かで厳かささえ感じさせる。
 
 昼食が終れば食器類を静かに返却して句会場へ、会議室で、机椅子が整然と並べられてあった。
 
 締切時間が近づくと、何時もの通り雰囲気が張り詰める。句会は、場所柄か、何時もより緊張している感じで、先生の指導や句評の声も凛としてよく通り良い句会を終える事が出来ました。
 
 多くの御参加、種々御協力厚く御礼中し上げます。
 次回も又よろしく。
 
 
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石清水八幡宮が紹介されているホームページ
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