引鶴恒例の6月吟行は10日、恰も時の記念日である。暦の梅雨入りを明日にひかえて、曇ってはいるが雨の心配はなく少々暑いが吟行日和となった。
私はモノレール、京阪電車と乗り継いで9時半頃八幡市駅に着く、集合は10時頃、参詣ルートは自由となっている。
先生の一団と共にケーブルで登ることにしていたので、駅周辺、表参道を覗いて見る。駅前を行くと観光案内所があるが閉っている。まだ早いらしい。
駅前の男山を望む広場の巾央には、大竹を斜めに切って組み合せたモニュメントがあり、上部にはエジソン電球の模型が高く掲げられていて、歩遭の横にはエジソン胸像もしゃきっと。
一の鳥居から八幡宮の御旅所の頓宮へ、眞っ直ぐに抜けると二の鳥居を経て、石段の続く表参道に出る。八幡宮本殿へは40分は優にかかる、かなりきつい行程である。
頓宮を通り抜けると、左手に木造の由緒ありげな太鼓橋が見え、その間近かに白壁の蔵が昔のまま残されている。川岸へ下るとさざ波公園とあり、整備されている。
川は、かの有名な放生川で、岸の紫陽花が淡い彩の毬を競っている。駅へ戻るとメンバーが揃ってきていて、表参道を行く人達は出発して行った。
吾々は、ケーブルカーでゆっくり登る。紫陽花の続く上には男山の象徴的竹林が若竹を美しく演出し、樹木は緑を濃くしてきている。4、5分で男山山上駅である。
駅を左へ出て道なりに大きく廻ると展望台、これ以上なき視界で、心晴ればれの涼しさである。
青楓が天を覆い、奥の崖っぷちの上には谷崎潤一郎の文学碑が所狭しと据っている。今日は夏霞で正面の京の市街は見えないが、比叡山四明ヶ獄や愛宕山がうっすらとそれらしく望む事ができる。
左手の下は八幡市で桂川、宇治川、木津川の合流点を俯瞰し、右手は宇治でその右には流橋があると掲示されている。
紫陽花や山気濃ければ色も又 佐知
青楓でんと芦刈文学碑 窓城
薮蚊まづ払ひて読める碑文かな ゆたか
展望台の緑陰からの眺望を楽しんで、又もとのケーブルで参道に戻る。男山の瞼しい山腹を切り取って道が作られている。
見上げるも見下ろすも竹、竹、竹で空も目視の遠景も封じられている。そして丁度皮を脱いでいる大きな若竹が随所に見掛けられる。
余程手入れが行き届いているらしい。見上げていると時折竹落葉が降ってくる。
気がついてみると、竹林の斜面は竹落葉を重ね、参道にも、その切り立った壁面にも散りかっていて風情である。
勿論この景はこの道に限った事ではなく、他の参道も共通である事は容易に想像できるし、句会に於いて証明された。
天空へ競ふ八幡の今年竹 舟津
どの遣を行くも若竹男山 律子
今年竹裾なる皮はまだ脱がず 木賊
このケーブル参遣をしばらく行くと参道の左側に木の鳥居があって灯篭が一対、すぐ前の杉の木に注連がしてある。
取り敢えず二礼二拍手一礼。後に本殿案内所でお聞きしたところ伊勢神宮遥拝所との事。拝んできて良かった。
又この蓬拝所の道の反対側には細橋と云う石橋が滴りに架けてあって、常に四隅に榊を建て注連を張って往来を禁じていると云う。石清水の上流であるとのことでした。
竹落葉や緑陰のケーブル参道も裏参道と合流し、更に進むと石畳の登り道となり、急に視界が広くなって表参道の広小路である。
左の石灯篭の林立の先には三の鳥居があり神馬舎である。その圧は松花堂跡、更に奥には石清水杜があって、玄冬にも氷らず大旱にも涸れない石清水井がある。