座禅草群生地吟行記
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平成18年3月12日  足立靖子
 引鶴垣例の3月吟行は12日、湖西に春を告げる今津の座禅草と決定されていて、JR湖西線の今津駅に10時集合となりました。貫野浩先生を筆頭に今津の俳句会のメンバーが世話役である。

 JR湖西線は、京都市の山科駅から滋賀県の西浅井町の近江塩津駅に至るJR西日本の鉄道路線であり、西に比叡、比良山脈を見上げ、東は琵琶湖水面を見下ろしながら走る人気の路線でもあります。

 今津町は昨年の1月1日、高島郡の五町が合併して高島市となり、町名はそのまゝ残されました。箱舘山のふもと、湖畔の町で沼が多く、滋賀県緑地環境保全地域にも指定されています。
 
 中心は古くから湖上舟運の接続点として発達した今津港で、現在も西国33ヶ寺第30番札所宝巌寺や国宝都久夫須麻神社等見所一杯の竹生島への観光船や琵琶湖周航にも便利な所でもあり、家族旅行村やスキー場もあって、四季折々の楽しみがいっぱいの町です。

 吟行当日は、断続的な小雨で生憎の天気でしたが、その翌日は冬に逆戻りで朝、目が覚めると一面真っ白の雪景色であった事を考えれば、良かったのだと救われた気分でした。
 
 今津駅から総勢26名、車で北西へ約2キロ、句会場へ行き荷物を預けて、目的地の座禅草群生地までは徒歩、小雨の中しっかりした足取りである。
 
 通常なら炬燵の中で居眠りでもと思はれるお歳の御婦人がである。流石熱心な俳人と驚く。「山の中にあると思いきや町の中にあるのですね!」との声も聞きながら約15分行くと孟宗竹の林が見えて、いよいよ、座禅草と対面の時となる。
 
 その場所は、今津町弘川の宮西地区の湿地帯で石田川の下流域にあり、地下水位が高く、湿地を形成していることから、座禅草の生育に適しているのだそうです。約5千平方米、約3千株自生、群生地の南限とされています。
 
 発見は1981年と云うからそう古くはない。そして発見者は今津中学生が理科授業の観察時だと云うから面白いです。

 榛の木と竹林に囲まれた湿地帯に、兄弟が遊んでいるような、寄り濠って仲の良さそうな、仲間が集って何か相談しているような、太陽に向ってしっかり咲いている姿など可愛いいとさへ感じました。
 
 座禅草はサトイモ科の多年草で赤紫色の苞(仏焔苞)の中に黄色く見えるのが花で、その姿が僧の座禅を組む姿に似ていることから座禅草の名がある。しかし大きさは一定せず。
 
 土地の人は少し小さいのを姫座禅草、更に小さいのを豆座禅草とも呼ぶ。そして小さいのが大きくなるのではなく、小さい座揮草は小さいまゝ果てるのだそうです。
 
 花が終ると葉が伸びて尾瀬等で咲く水芭蕉と同じ仲間である事を明らかにする。違う点は座禅草の花には悪臭があり、その匂いに誘われて蝿がやってくる事や、自家不和合(同じ個体の花の花粉では、受粉しても種ができない)等があるのだそうです。
 
 更にもう一つは発熱です。早春の寒さの中で、花は15度から35度の温度を保っているのだそうです。その方法機能は、花一つひとつの細胞の中に「ミトコンドリア」と呼ばれるエネルギー発生器官があって、その働きを活発化させることで、高い熱を作り出しているのだそうです。
 
 目的の一つは昆虫を誘う為、今一つは寒い気候の中で花を守る役目を持っているのだそうです。
 また座禅草を囲むように多くの植物が慈しむように茂っている。
 
 湿地帯の花の分布は一様ではなく、湿地内の植物の粗密、日照の具合、土壌水分その他の環境条件の違いによって、大きく異るのは至極白然な事である。
 
 そしてこの座揮草の生態の観察や、その美的姿態の鑑賞の為、南北を結んで木道が設けられ程よい巾、程よい高さとなっている。
 
 そしてこの木道の中程辺りでは、長年この群生地を見守り管理されてきたボランティアの桂田さんが今日も小雨の中熱心に説明されている。
 
 しばらくはその場を離れる事ができませんでした。その熱心さは多くの感動を呼ぶもので感謝感激でした。一通りの説明を聞き終え入口に戻る。
 
 再び木道へ向う人、すぐ近くの高速の橋蔭で旬帖を出し真剣な顔の人、人、人、何か見てやろう、何か感じてやろう、そして名句をものしようの面々である。
 
 時間になって句会場へ戻る。句会場では準備萬端整っていて、お心尽くしの昼食を頂きました。
 

 初めて参加の友人と共に緊張した句会を迎え、皆様の短冊が廻るたび友人の「良い句ばかりで写す時間が足らない」と云う悲鳴にも似た声がしました。
 
 佐知先生の厳しい御指導、やさしい励まし、和やかな雰囲気のうちに句会を終了しました。
 
 
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座禅草群生地が紹介されているホームページ
https://takashima-kanko.jp/spot/2018/06/post_160.html