俳誌「引鶴」の吟行会は毎月第2日曜日に近畿一円のいずれかの地で開催され、5月は13日に大阪市北区の中之島公園内の薔薇園一帯で開催された。
当日は、午前10時淀屋橋南詰に集合し主宰を中心にして中之島に渡り吟行がスタートした。
淀屋橋上から中之島を眺めると、ビル群が木々の緑の上に浮かぶ島の景をなし、若葉風が川風となり通抜けていた。また橋上から川面を眺めると中之島の緑を写し魚が跳ねるのが見え、亀が泳ぐのが見られた。
橋により眺む水都の夏の景 律子
中之島は、東から西に流れる堂島川と土佐堀川に囲まれた東西約3キロメートルで、西部に三井倉庫など運輸倉庫、大阪国際会議場、ホテル、市立科学館、日本銀行大阪支店のほか、商社ビルが林立している。
湧きあがる新樹の帯の中之島 舟津
東部は、大阪市役所、府立中之島図書館、中央公会堂、東洋陶磁美術館、テニスコート、野外音楽堂などがあって、最東部に公園の薔薇園や剣先広場がある。
図書館の静寂出づれば若葉風 道子
中之島公園は、明治24年に大阪市の市営公園第1号として誕生して以来、都心のビジネス街のオアシスとして親しまれ、昼は、サラリーマンやOLが集い、夜は、デートスポットとして人気が高い。
薔薇園に適う洋館明治めく 多津子
一行は、市役所の南側、土佐堀川側道路を東進して薔薇園へと向かった。この道路の平日は、商用車の通行が多く、サラリーマンやOLが行き交うが、当日は薔薇園に向かう二人連れや子供家族ずれ、趣味のカメラマンが行き交っていた。
母の日や母乗る車押して園 木賊
沿道は、桜・樟・アカシア・欅・躑躅などの木々の若葉青葉が薫り、川風と相まって心地のよいそぞろ歩きの吟行となった。途中歩道に花しべが異様に多く落ちていたので見上げると樟の木であった。
薫風や欅並木の日の斑踏み 宮子
樟は、若葉と開花が同時期であり、若葉は湧くように生じ独特な美しさがあり俳句によく詠まれるが、花は薄緑色で目立たず、高木では見上げてもなかなか見えにくいので俳句の季題としては成立しない。
市役所を島に浮かべて樟若葉 ゆたか
順路には、重厚な府立図書館・中央公会堂があり、木々の若葉の上にこれらの施設が浮かんでいるように見え初夏の日ざしに照らされていた。
薫風や明治を今に残すビル 佐知
この図書館は、私事ではありますが、在職中の一時期、資料文献の閲覧、複写に度々訪れたことが懐かしく思い起こされ、また退職を記念して上梓した拙句集が収蔵されていることから親しみを込めて眺めることができた。
新樹光図書館燦とかがやけり 多津子
中央公会堂は、大正7年に建てられた堂々たる赤レンガの建物で、ネオ・ルネッサンス建築の傑作にあげられており、中之島のシンボルとして親しまれてる。
祝婚のレトロの堂や聖五月 舟津