中之島バラ園吟行記
haidan-06.gif haidan-05.gif
平成19年5月13日  野田ゆたか
 俳誌「引鶴」の吟行会は毎月第2日曜日に近畿一円のいずれかの地で開催され、5月は13日に大阪市北区の中之島公園内の薔薇園一帯で開催された。

 当日は、午前10時淀屋橋南詰に集合し主宰を中心にして中之島に渡り吟行がスタートした。

 淀屋橋上から中之島を眺めると、ビル群が木々の緑の上に浮かぶ島の景をなし、若葉風が川風となり通抜けていた。また橋上から川面を眺めると中之島の緑を写し魚が跳ねるのが見え、亀が泳ぐのが見られた。
 
  橋により眺む水都の夏の景 律子

 中之島は、東から西に流れる堂島川と土佐堀川に囲まれた東西約3キロメートルで、西部に三井倉庫など運輸倉庫、大阪国際会議場、ホテル、市立科学館、日本銀行大阪支店のほか、商社ビルが林立している。
 
  湧きあがる新樹の帯の中之島 舟津

 東部は、大阪市役所、府立中之島図書館、中央公会堂、東洋陶磁美術館、テニスコート、野外音楽堂などがあって、最東部に公園の薔薇園や剣先広場がある。
 
  図書館の静寂出づれば若葉風 道子

 中之島公園は、明治24年に大阪市の市営公園第1号として誕生して以来、都心のビジネス街のオアシスとして親しまれ、昼は、サラリーマンやOLが集い、夜は、デートスポットとして人気が高い。
 
  薔薇園に適う洋館明治めく 多津子

 一行は、市役所の南側、土佐堀川側道路を東進して薔薇園へと向かった。この道路の平日は、商用車の通行が多く、サラリーマンやOLが行き交うが、当日は薔薇園に向かう二人連れや子供家族ずれ、趣味のカメラマンが行き交っていた。
 
  母の日や母乗る車押して園 木賊

 沿道は、桜・樟・アカシア・欅・躑躅などの木々の若葉青葉が薫り、川風と相まって心地のよいそぞろ歩きの吟行となった。途中歩道に花しべが異様に多く落ちていたので見上げると樟の木であった。
 
  薫風や欅並木の日の斑踏み 宮子
 
 樟は、若葉と開花が同時期であり、若葉は湧くように生じ独特な美しさがあり俳句によく詠まれるが、花は薄緑色で目立たず、高木では見上げてもなかなか見えにくいので俳句の季題としては成立しない。
 
  市役所を島に浮かべて樟若葉 ゆたか
 
 順路には、重厚な府立図書館・中央公会堂があり、木々の若葉の上にこれらの施設が浮かんでいるように見え初夏の日ざしに照らされていた。
 
  薫風や明治を今に残すビル 佐知
 
 この図書館は、私事ではありますが、在職中の一時期、資料文献の閲覧、複写に度々訪れたことが懐かしく思い起こされ、また退職を記念して上梓した拙句集が収蔵されていることから親しみを込めて眺めることができた。
 
  新樹光図書館燦とかがやけり 多津子
 
 中央公会堂は、大正7年に建てられた堂々たる赤レンガの建物で、ネオ・ルネッサンス建築の傑作にあげられており、中之島のシンボルとして親しまれてる。
 
  祝婚のレトロの堂や聖五月 舟津

 
 時折しも、近くのホテルで結婚式を挙げたと思われるウエディング衣の二人が公会堂を背景にして記念写真を撮っていた。この新婦が手にしていた明るいクリーム色の薔薇ブーケが印象的で微笑ましく思われた。
 
   公会堂婚儀に出逢ふ薔薇の風 寿美

 公会堂の東端、天満祭で有名な鉾流橋南端から堂島川沿いの「薔薇の小径」を経て「薔薇の広場」に至り、さらに「ばらぞの橋」を渡って「薔薇の庭」に向かった。
 
   薔薇の香や水の都の川に添ひ 佐知
 
 この三つに分かれた広大な薔薇園は、1万3千平方メートルに及び、植込まれている薔薇は約90品種、約4千株と言われている。
 
  ビル街のここがオアシスばらの園 公枝

 薔薇の栽培史は古く、ギリシャ、ローマ時代にさかのぼる。現在は世界中で栽培されていて、品種は五千とも六千ともいわれ、毎年、発表者の国語で命名された新種の薔薇が発表されている。

  薔薇真紅空の青さの限りなし 窓城
 
 従って、薔薇の名は洋名あり、和名ありで覚えきれるものではない。
 
  薔薇の名を一つ覚えてオードリー 恭生
 
 私は、薔薇を鑑賞するに当たっては、花の名前はさておき、花の大きさ、その色合い、房咲などの咲き方、蔓性などの種類、薫りに着目し薔薇の多種多様を楽しんでいる。
 
  咲き誇る百種百態ばらの花 不二子
 
 薔薇園の東部は剣先公園で大川が堂島川と土佐堀川に分かれる分岐点に接する最先端で、俯瞰すると剣の切っ先の形をしていると言う。
 
  大川の風飄々と夏めきぬ ゆたか

 剣先公園はだだっ広い広場で旧軍艦「最上」のマストの実物大模型が建てられていて、大阪湾へと水路が続く天満界隈の水上交通時代の往時が伺い知れる。
 
  花アカシア零れ軍艦マスト建つ 舟津

 この広場を取巻く堤には柳が日ざしを返し川風に揺れていた。川岸には鮒又は鯉狙いと思われる釣人が竿を出しており五月光を川面が増幅してきらきらと輝いていた。
 
  釣人の竿も動かず夏の川 由美子
 
 午後0時に中之島を出て、昼食をとり句会場の西区民センターに向かった。句会は、午後1時30分締切で始まり、披講後に主宰から矚目吟詠における季題の扱方などについての指導があって実りある一日を過ごすことができた。
 
 ご参加者の皆様ありがとうございました。
         
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中之島公園が紹介されているホームページ 
https://www.jalan.net/kankou/spt_27127cc3312003707/