東光院(萩の寺)吟行記
平成20年9月14日 梅田澄子
引鶴恒例の9月吟行は、阪急宝塚沿線曽根の東光院通称「萩の寺」でありました。早朝の天気予報を気遣い乍ら出て、曽根駅に着いた頃には天候の心配もなくなりほっと致しました。
道案内の標識を頼りに約5分程町中を歩いて来ると、欄干の低い朱の橋があって向うに山門が見える。東光院の境内の入口のようで延命橋とあり、下は公園となっていました。
渡り切ったすぐの正面が山門で葵の紋の鰻幕が張られて、萩まつりの始まりを告げている。手前右手の萩叢には虚吼の句碑が見え隠れし、左手の小竹林には虚子の句碑が新しい姿である。平成14年9月建之とある。
於もひ於もひに坐りこそすれ萩の縁 虚 子
我のみの菊日和とは夢思はじ 虚 子
山門を一歩入るとずいーと萩で石畳、燈篭等整然そのもので初々しい萩が出迎えてくれました。思い出した
見る人に少しそよぎて萩の花 虚子の句
そのままに感動を覚えつつ巡らせて戴きました。
この寺の萩は宮城野萩を主流として、夏萩、江戸絞り等新種を含めて十種を越すほどでそれぞれ開花期がずれているので花期は永いのだそうです。
落ち付いた伽藍のたたずまいに優美な花姿を風に摩かせる萩の組合せは絶品で、境内の魯山人が名付けたと云われる萩露園は、花のトンネルを思わせ、その高さが人の背丈を超える。
頭上より脚下まで、小さな花をたわわにつけて枝垂れる姿に華やぎを感じさせてくれるのだと思います。寺縁起には萩と行基菩薩について次の様に記してあります。
『日本人の美と心を象徴する萩は、秋の七草の一つとして知られるが、
行基ゆかりの草花でもある。』
その名の由来は「生え木(はえぎ)」に由来し、古来から生命力の強さや復活を象徴する。そこに先亡の霊への想いを表わす供花への源流がかいま見られる。
もと当院のあった豊崎あたりは、古くから死人が出ると淀川河畔に捨ててしまう風習があり、「浜の墓」とも呼ばれた。
後に行基菩薩がこの地を訪れたとき浜に風葬されている光景を見て、民衆に我が国で初めて火葬の方法を伝授した。
天平7年秋の事と云う。行基菩薩は茶毘に付した死者の霊をなぐさめる為自ら一体の薬師如来像を造り、その仏前に淀川水系に群生する萩を手折り供えた。
それを縁に人々が浄財で薬師堂を建立したのが東光院の始まりである。
以来、「行基菩薩のこころ」として連綿と守り継がれた萩の花は、四苦八苦の人生を闘い抜く生命力の強さと、貧しく弱い人の心も和合し合力する事によって、大輸の花にも優る雄大なの美と力を持つことができると訴え続けてきた。
その伝統は今も萩とともに息づいている。と云われております。斯う云われると諾なるかなと思います。
東光院は、山号を仏日山吉祥林、寺号を東光院と呼び、行基菩薩開創になる曹洞宗別格寺院と云う。山門を入ると石畳が真っ直ぐ続いている。
すぐの左側に観音堂があって、三十三観音お砂ふみ霊場となっていて最奥には御本尊の旧川崎東照宮の御本地仏の厄除薬師如来が祀られている。
そのお隣りはあごなし地蔵堂で、明治の廃佛毀釈の御難に遭われた隠岐の島の伴桂寺から遷座された艱難辛苦の我が国最古級の地蔵三尊像が祀られている。
50年に一度の御開帳とのことで今日は拝観できず残念でした。又あごなしは阿古(人名)直しがなまったものとの説明があります。その向い側には萩の花を潜って大法輪やお百度石がそっと覗いているかの様でありました。
総門をすぐの辻には水子供養地蔵尊が菩提樹を天蓋としての立像で、時折菩提子を降らせていて思わず手を合せておりました。左奥には萩まつり御祭神の道了大権現の御堂がある。
本堂への石畳のあたりが白萩の後園となり、萩叢に次ぎの句碑がある。
ほろほろと石にこぼれぬ萩の露 子 規
狩りくらは大月夜なり寝るとせん 木 国
門前すでに丈余の萩の盛り哉 月 斗
本堂の吉祥林円通殿は、萩の庭句碑の道の最も奥に棟瓦の葵紋を金に光らせている。祀られているのは仏舎利を収めた孔雀宝座で正にきらびやかではある。
こより観音として有名な十一面観世音菩薩立像の厨子は閉扉されたままで残念乍ら拝する事はできなかった。又当院の重文、降魔座釈尊像(像高7糎余)は大阪市立美術館に寄託中とのことでした。
この他平安後期の宝物を数多所有の古刹で、新西国三十三か寺の十二番霊場でもあり、緑百選、観光百選にも数えられています。
萩に憩い、佛像に癒され、作句の一刻を過した後は東光院から句会場の池田中央公民館への移動である。曽根駅から普通で駅5つ目が池田駅です。駅周辺や公園のレストランで昼食を済ませました。
今回は吟行地から句会場まで電車を乗り継ぐ不便があって心配しておりましたが、29人と云う多数の御参加を得まして楽しい句会となり、皆様のお蔭を持ちまして恙なく終了することができました。
御出席の皆様有難うございました。次回もお会い出来ます事を楽しみに致しております。
先生にはご親切なる御指導、御講評厚く御礼申し上げます。
会場を申し込みまして二か月待つ間は永く思いましたが、一と日萩に包まれて楽しく幸せでした。ありがとうございました。
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