人いきれを逃れる様に私は梅林を出て春水の濠端から極楽橋を渡る。春の日を返す鏡の水面に残り鴨が散見される。知らぬ間に一人である。
暫くは残る鴨見て橋半ば 佐知
天守の威映りし濠の水温む 不二子
濠端にものの芽息吹くそここにに 良一
淀君秀頼自刃の碑の前へ来た時、素通りする人が多い中で、中年の男性と娘と思われる二人が献花して暫く合掌している。
はっとして片手拝みに通り過ぎたが、大阪人の太閤に対する暖かい心をみた心地よい一事ではありました。
自刃の地木々の暗さにある余寒 不二子
淀君の自刃の跡や梅ほのか 静代
今少し進むと残念石の標示があって、徳川の城再建時に、西国大名が幕府への忠誠心の証として運び込んだ建設用の石の溜場である。思い思いの大きさ形でよく見ると大名の家紋が刻んである。
捨てられたものであろうけれども、自然のままに今に気儘な姿で裾を埋めて残っているのが面白く木の芽風と春日燦である。
残念石関せず城の地虫出づ 木賊
ところ得ぬ残念石や下萌ゆる 窓城
櫓の遺構の問を抜けると天守閣の真下へ出る。天守閣広場で、右手の低い階段を上ると濠の向うに西の丸公園があって、桜の名所であり、迎賓舘も俯瞰の視野にある。その先一帯は大阪の官庁やビジネスのビルが立ち並んでいる。こうして眺めるとビル街もなかなかの美観である。
淀殿の住みし跡とや草萌ゆる 泉也
眺望の鴫野片町薄霞 雄次郎
霞立つ二た上望む天守より 美和子
中央辺りへ来ると少しは疎らとなったが人人人で、大道芸の喚声が上っている。又植込の前に銀に光るタイムカプセルがあって表示されている。
うららかや大道芸に湧く拍手 とも江
楽流し風船飛ばす城の内 岸野幸子
日本万国博覧会に於ける松下電器と毎日新聞の企画によるもので、5000年後に開封されることを託して埋設されている。
大阪城を訪れたならば天守閣へ上って太閤気取りの眺望を楽しむのが通例であるが、私は句会場の時間の都合もあって天守閣を素通りし、元師団司令部を横目に、蛸石から銀明水、桜門、空濠等を巡って戻り、句会場の豊城園へ入りました。
煉瓦古る元司令部の館余寒 泉也
麗かや銀明水に来る雀 ゆたか
空濠を埋めて草の芳しき 窓城
暖かさと好天の為、大賑いで、よくぞ事前に予約しておいたものだと安堵したものの句会場の隣の部屋まで昼食の団体客が入れ交り立ち交り、それも日本語が通じない同胞の様な風貌である。
賑やかな昼食をすませ、少々雑音のある中での句会となる。
春光や句座より仰ぐ天守閣 窓城
今日の吟行の参加者は35名で最近にない多数の御参加、誠に有難うございました。騒音や落ち付けないもろもろ。好天に恵まれた事もあってとお許し下さい。
先生にも、満足な選や選評ができなかったのではないかと思います。申訳ありませんでした。次回もまたよろしく御越し下さい。
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大阪城パークセンターのホームペーシ