久安寺(池田市)吟行記
平成２１年１０月１２日 西﨑佐知
今月は引鶴恒例の吟行、大阪池田市の花の寺久安寺へ参りました。
久安寺吟行は１０月１２日、阪急梅田駅から宝塚行の急行で池田へ、池田は松下幸之助所縁の地だったかな等と思っているうちに池田着。
久安寺吟行は１０月１２日、阪急梅田駅から宝塚行の急行で池田へ、池田は松下幸之助所縁の地だったかな等と思っているうちに池田着。
バス停で大阪の句友と合流し、バスは快調に走って１５分程で久安寺停留所に着いた。
先ずは少し戻って国道すぐそばの秋天に聳える楼門を見上げる。水平の無い軒反りという他に類例を見ない優れた固有の技法が造りあげた美術建築で、最も古くて美しい楼門と評価されている。
剥落も目立ってもう少し手入れされてはと思う。
近付いて見ると、あの自己主張の強い仁王尊が親柱より後へ控えて安置された珍しい佛堂形式となっていて、楼門をより一層壮大に見せている。
近付いて見ると、あの自己主張の強い仁王尊が親柱より後へ控えて安置された珍しい佛堂形式となっていて、楼門をより一層壮大に見せている。
その楼門に寄り添うかの銀杏もまた立派なもので、既に実を落とし始め、黄葉して樹形を耀わせている。
法城を囲む四方山秋深かむ 舟津
閉ざされしままの楼門秋日濃し 恭生
楼門に歴史の重み秋深し 佐知
仮設の扉を開けて楼門を入ると石畳の参道で、両側の楓の古木が枝を広げて天へ薄々紅葉、薄紅葉である。その楓の木の裾は咲き終った紫陽花が花の頃を思わせぶりに茂っている。
本坊の前を過ぎると右側に大榧が樹齢を誇っていてそこかしこに皮を被った実を落としている。
珍しいと拾って一寸捻ると茶紫の優雅な実が現れた。この榧はかの豊臣秀吉が参拝した時の記念植樹で、幹廻りは約３メートルと受付の方の説明があった。榧の向い側の受付で予約していた法話をお願いする。
榧の実のここだ秀吉寄りし寺 佐知
早速御住職のお出ましがあり、先づは鐘堂に集まる。短い法話のあと御住職の一山を清める一打が響き渡る。
略記によると「はじめに真言あり、梵音となりて虚空に遍じ、心の耳を驚かせて佛性を醒ます。歓喜の声常に新たなり」と仏前に詣でる時、作法に従って撞けば、開運の功徳をいただくとあります。
心が落ち付き、おおらかな気分となる。そばに秀吉の腰掛石が残されており、側に立って広々とした境内を眺めると、正面北に本堂、東に薬師掌西方には阿弥陀堂があって四方四佛の曼茶羅に整えられている。
鐘一打一打に秋思耕ひをり 寿美
鐘撞けば余韻にありぬ秋の声 窓城
御法話は薬師堂(瑠璃光殿)で、この薬師堂は西国薬師霊場開創記念に建立されたもので諸活動ができる仏教徒会館となっているとの事。
正面には阿しゅく薬師如来立像が祀られている。左掌には薬壷であるが通常の脇待である日光月光菩薩も、春属の十二神将も従えていない。祭壇は質素で親しさを感じたのは私だけではあるまい。
私は献香をして合掌、神妙に佛前の椅子に腰してご法話を待った。ご住職は先づ薬師讃歌を唄い出された。皆んなで神妙に合唱する。
薬師讃歌
１ 東雲の果て光りして／目覚の衆生度し給う
／薬師瑠璃光如来尊／祈りも新た幸あらん
２、３ 省略
ご法話は薬師経をやさしく解説されたかに思った。私が理解できたのは小我を捨て、大我に生きよの一節くらいのものであったが心を空にした一ト時であった。
いやされし薬師賛歌や小鳥来る 伝三
秋澄むや小我捨てよと薬師経 窓城
合唱の薬師讃歌の堂さやか 佐知
御住職の法謡のあとは境内の散策と諸堂のお参りである。先程の広場へ戻って磴を上り本堂へ。
略記によると本堂は大悲殿とも云い、行基感得聖武帝勅願の千手観音を胎内佛として、賢実中興御一条帝勅願定朝刻作、鳥羽帝祈願近衛帝安産の
秘佛千手観音立像が本尊とあり、不動、多聞の両脇士、四天王、両界マンダラ、八祖図像尊を祀り開運招福祈祷所、仏前結婚式場で、礼拝行も勤められるとあります。
献香合掌し、左裏手に廻ると広い庭園で虚空園の花園である。今は既に葉を落としているが五月初旬には絢燭たる牡丹が花の美を競ったであろう事が容易に想像される。
牡丹は仏教と共に中国から伝えられ千変万化の艶姿となって都人喜ばせたと花の寺の紹介にあります。
更に両果の道を挟んで東にア字山(生命)、西にバン字池(心)を配したのが虚空園で、瞑想する佛の世界を見現した曼茶羅の庭、四季彩りの絶えない花の聖地であると、目のあたりにして納得。
秋陰の秘佛におはす観音像 寿美
群咲いて矢筈の芒バン字池 舟津
まだ苑の景を引き立てゐる芙蓉 佐知
ア字山の少し先には開創の行基菩薩のにこやかな坐像があり、その前にはこれも嬉しそうな童子像数体が侍っていて、和やかさを醸している。
その先は両側に蓮池があって、今正に実を飛ばさんの恰好である。
その先は両側に蓮池があって、今正に実を飛ばさんの恰好である。
小鳥来て童の像のにこやかに 宮子
蓮の実の今に飛び出しさうにあり 幸恵
敗荷を分かち両果の道真直ぐ 窓城
この真直ぐの道の先、最も奥に、宝寿の九輸を秋天に高く輝かせている白い円形の佛塔がある。
この佛塔は舎利殿涅槃堂或いは納骨慰霊堂とも云われ、この地は大正年間までは本堂のあった聖地で、釈尊の舎利と涅槃石像が祀られた石造建築である。
献香合掌して涅槃像を一巡しながらその大きさに驚きつつ気になるところを触らせて頂きました。
尚舎利塔の裏山には無数の古い小柄な五輸塔が重なる様に祀られていました。
天丼に秋の日もるる涅槃堂 舟津
開放さる秋日に眩し涅槃仏 不二子
爽秋や寝釈迦の螺髪触れもして 佐知
境内を巡る最後は少し高台になっている三十三所堂を巡る長い回廊を拝しながら抜けて、弘法大師の御影堂にもお参りしてほぼ時間となり久安寺を後にして再びバス電車を乗り継いで池田へ。
鵯の来て一山続べてをりにけり 恭生
訪ねきし曼茶羅聖地秋晴るる 窓城
もみづれる山を背にして虚空園 佐知
駅からすぐ近くの福祉会館が句会場で各々昼食をすませて集合する。皆様の御協カにより順調に句会を終了させて頂きました。厚く御礼申し上げます。又多数の御参加有難うございました。
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久安寺が紹介されているホームページ