橋 本 幹 夫　選 
　　老いてなほ我が人生の桜かな／木村宏一
　　散る花の岸辺の船に琴の鳴る／清水恵山
　　　囀りや谷瀬をまたぐ大吊橋／瀬尾睦夫
　　　　健歩計数値停滞菜種梅雨／筒井省司
　朝寝して夢の謎解きつなぎけり／後藤允孝
ふらここを漕ぎ出す空の青さかな／白根鈴音
　　　　　米朝の葬列長し鳥雲に／池下よし子
　　　　大根の花咲き誇る一反畑／山口美琴
　　　　白藤の花房濡らす川飛沫／渡邊春生
サザエさんまれに笑点みなうらら／田村公平

清 水 恵 山　選 
　　　　山肌に風の道あり山躑躅／木村宏一
あれこれで伝はる二人のどかなり／石崎そうびん
　　　　夏近し古城に騒ぐ松の風／橋本幹夫
　　　公園の砂さらさらと夏近し／池下よし子
　　　風光るゴルフ大会老い集ふ／山口美琴
　　　　　三舟山近くて遠い春霞／筒井省司
　　　鳥帰る単身赴任の我を置き／田村公平
　　　付き添ひの妻ゐる安堵夕桜／渡邊春生
　　老い深め杖に込めたる遍路道／後藤允孝
　　歓声のホールインワン風光る／瀬尾睦夫

瀬 尾 睦 夫　選
　生き急ぐことなく老いて春の宵／森戸しゆじ
　穏やかも激しくもあり飛花落花／木村宏一
　　ぶらんこを漕ぐ音させて姉妹／駒田暉風
　　種袋振ればにぎやか音たてて／石崎そうびん
　　花水木途切れて交差点曲がる／石川順一
　　腹見せて眠る愛犬サイネリア／橋本幹夫
　　　花見船潜るなにはの橋幾つ／池下よし子
　　心地よき風に乗りゆく花吹雪／山口美琴
　　　　庄屋跡都忘れの咲き満る／清水恵山
　　　付き添ひの妻ゐる安堵夕桜／渡邉春生

池 下 よ し 子　選 
生き急ぐことなかく老いて春の宵／森戸しうじ
　　　　山肌に風の道あり山躑躅／木村宏一
　レガッタの声真つ直ぐに澪二線／橋本幹夫
　　　　大根の花咲き誇る一反畑／山口美琴
　　　真青なる空や大地の麦青む／清水恵山
　　　満天星の花にきらりと雨雫／筒井省司
　　　　付添ひの妻ゐる安堵夕桜／渡邊春生
　　雨粒のきらり零るる朝ざくら／後藤允孝
　　歓声のホールインワン風光る／瀬尾睦夫
ふらここを漕ぎ出す空の青さかな／白根鈴音

森 戸 し ゆ じ　選 
　　　斑でも芝の芽吹きや鳥の声／駒田暉風
　レガッタの声真つ直ぐに澪二線／橋本幹夫
　　　花見船潜るなにはの橋幾つ／池下よし子
　　心地よき風に乗りゆく花吹雪／山口美琴
　　　　　庄屋跡都忘れの咲満る／清水恵山
　　　荒磯に落つる果て迄耕せり／田村公平
　　　　　旅立ちの躍る心や花筏／渡邉春生
　　雨粒のきらり零るる朝ざくら／後藤允孝
しばらくは見入るばかりや花明り／瀬尾睦夫
　　　生国の水は豊かに蝌蚪の国／白根鈴音

木 村 宏 一　選 
　　　舌下錠溶けて息つく戻り寒／石崎そうびん
　　　　御利益は回向柱にご開帳／橋本幹夫
むくむくと山動くかに木の芽吹く／池下よし子
　　心地よき風に乗りゆく花吹雪／山口美琴
　　　　　庄屋跡都忘れの咲満る／清水恵山
　　　鳥帰る単身赴任の我を置き／田村公平
　　　　　旅立ちの躍る心や花筏／渡邉晴生
　　雨粒のきらり零るる朝ざくら／後藤充孝
　　　囀りや谷瀬をまたぐ大吊橋／瀬尾睦夫
　　　生国の水は豊かに蝌蚪の国／白根鈴音

筒 井 省 司　選 
　　　諳んじて駅名言う子春日陰／田村公平
　　桜散る宴たけなわの青シート／池下よしこ
　　　　　庄屋跡都忘れの咲満る／清水恵山
　　　　御嶽に煙ひとすじ桃の花／石崎そうびん
　　　付き添いの妻ゐる安堵夕桜／渡邉春生
　　　　火渡りの健康祈願春祭り／山口美琴
　　　潮騒を空に集めて浅蜊掻く／橋本幹夫
　　　菜種梅雨今日は一日曇り空／石川順一
　　　洞窟の狭き岩風呂燭おぼろ／後藤充孝
　　　菜の花や青春の日の京言葉／瀬尾睦夫

山 口 美 琴　選 
　穏やかも激しくもあり飛花落花／木村宏一
あれこれで伝はる二人のどかなり／石崎そうびん
　　花水木途切れて交差点曲がる／石川順一
　　　潮騒を空に集めて浅蜊掻く／橋本幹夫
　　　花見船潜るなにはの橋幾つ／池下よし子
　　　　　庄屋跡都忘れの咲満る／清水恵山
　　　　鶯や啼いて参道案内せり／筒井省司
　　　　　旅立ちの躍る心や花筏／渡邉春生
　　雨粒のきらり零るる朝ざくら／後藤允孝
　　　囀りや谷瀬をまたぐ大吊橋／瀬尾睦夫

石 川 順 一　選 
　　ごみ箱を伏せて廃校花吹雪く／田村公平
　　　連日の電球切れや菜種梅雨／同
　　　　隔日の雨遠ざかり春深し／同
　　　　一片は最上階に花吹雪く／同
　　寄居虫や挟みで測り宿替へる／清水恵山
　　　　古巣から骨材運ぶ鴉かな／同
　アネモネはむらさき君は朝帰り／橋本幹夫
　レガッタの声真つ直ぐに澪二線／同
　　またしても墓の勧誘四月馬鹿／池下よし子
　　接骨木の花や過疎地の小学校／春生