清月俳句歳時記 野田ゆたか編
 
実朝忌」のページの付録
 
 
編者が感銘を受けた「実朝」の詠歌 46首
 
 
 
その一
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その二
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その三
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その四
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その五
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源実朝の詠歌/今朝みれば山もかすみて久方の天の原より春は来にけり/春すぎていくかもあらねど我がやどの池の藤波うつろひにけり/吹く風のすずしくもあるかおのづから山の蝉鳴きて秋は来にけり/月影のそれかあらぬかかげろふのほのかに見えて雲がくれにし/今朝みれば山もかすみて久方の天の原より春は来にけり/この寝ぬる朝けの風にかをるなり軒ばの梅の春のはつ花/咲きしよりかねてぞをしき梅の花ちりのわかれは我が身と思へば/水たまる池のつつみのさし柳この春雨にもえ出でにけり/かづらきや高間の桜ながむれば夕ゐる雲に春雨ぞ降る/春ふかみ花ちりかかる山の井はふるき清水にかはづなくなり/ながめつつ思ふもかなし帰る雁ゆくらんかたの夕暮の空/我が心いかにせよとか山吹のうつろふ花に嵐たつらむ/散りのこる岸の山吹春ふかみこの一枝をあはれといはなむ/木のもとに宿りをすれば片しきの我が衣手に花はちりつつ/夏/春すぎていくかもあらねど我がやどの池の藤波うつろひにけり/さみだれに夜のふけゆけば時鳥ひとり山辺を鳴きて過ぐなり/いにしへをしのぶとなしにふる里の夕べの雨ににほふ橘/秋ちかくなるしるしにや玉だれのこすの間とほし風のすずしき/昨日まで花の散るをぞ惜しみこし夢かうつつか夏も暮れにけり/秋/吹く風のすずしくもあるかおのづから山の蝉鳴きて秋は来にけり/おほかたに物思ふとしもなかりけりただ我がための秋の夕暮/たそがれに物思ひをれば我が宿の荻の葉そよぎ秋風ぞ吹く/萩の花くれぐれまでもありつるが月いでて見るになきがはかなさ/暮れかかる夕べの空をながむれば木高き山に秋風ぞ吹く/天の原ふりさけみれば月きよみ秋の夜いたく更けにけるかな/わたのはら八重のしほぢにとぶ雁のつばさのなみに秋風ぞ吹く/ながめやる心もたえぬわたのはら八重のしほぢの秋の夕暮/雲のゐる梢はるかに霧こめてたかしの山に鹿ぞ鳴くなる/ながれゆく木の葉のよどむ江にしあれば暮れての後も秋は久しき/冬/秋はいぬ風に木の葉は散りはてて山さびしかる冬は来にけり/もののふの矢並つくろふ籠手のうへに霰たばしる那須の篠原/ささの葉に霰さやぎてみ山べは峰の木がらししきりて吹きぬ/夕されば潮風さむし浪間より見ゆる小島に雪はふりつつ/我のみぞかなしとは思ふ浪のよる山のひたひに雪のふれれば/うち忘れはかなくてのみ過ぐしきぬあはれと思へ身につもる年/歳末/ちぶさ吸ふまだいとけなきみどりごとともに泣きぬる年の暮かな/恋/夕月夜おぼつかなきを雲間よりほのかに見えしそれかあらぬか/月影のそれかあらぬかかげろふのほのかに見えて雲がくれにし/奧山の岩垣沼に木の葉おちてしづめる心人しるらめや/わが恋は百島めぐり浜千鳥ゆくへもしらぬかたに鳴くなり/雑/忍びて言ひわたる人ありき遥なる方へゆかむと言ひ侍りしかば/湊風いたくな吹きそしながどり猪名の水うみ船とむるまで/旅をゆきし跡の宿守おのおのにわたくしあれや今朝はいまだ来ぬ/箱根路を我が越えくれば伊豆の海や沖の小島に波のよる見ゆ//ながむれば吹く風すずし三輪の山杉の木ずゑを出づる月影/神風や朝日の宮の宮うつしかげのどかなる世にこそありけれ/空やうみ海や空ともえぞわかぬ霞も波もたちみちにつつ/の中は常にもがもな渚こぐ海人の小舟の綱手かなしも/思ひ出でて夜はすがらに音をぞなく有りし昔の世々のふるごと/大君の勅をかしこみちちわくに心はわくとも人に言はめやも/山はさけ海はあせなむ世なりとも君にふた心わがあらめやも