正月14日は引鶴恒例の初吟行で今年は、平安王朝を偲ばせる日本文化の祖神を祀る平安神宮と早くから決められていた。
私達は京阪電車の淀屋橋から午前8時45分発の特急で三条へ、タクシーで10時少し前には平安神宮応天門の前に着き、集合を待った。
四温晴の好天気を出掛けて来たのに京都に着くとやはり時雨そうな雲行きである。が、応天門の青丹の優美さ、見上げる大きさ威容に圧倒される。
一般の初詣客も多い。私達も今年始めて会う人も多く、それぞれに御慶を述べ合って新年の華やぎである。
祭神は遷都の皇初詣 佐知
初吟行花烏誠詠ひたむきに 多津子
応天門前にて交はす御慶かな 寿美
ほぼ揃ったところで応天門を入り、身を清めて龍尾壇を上る。左に白虎楼、右に蒼龍楼が聳える。この宮の象徴的存在である。
冬帝の機嫌に白虎蒼龍楼 窓城
三寒の平安神宮朱に映ゆる 良一
御手洗の寒九の水を含みけり 公枝
大極殿の手前の右近の橘は既に黄色い実をたわわにつけ、保護するべく簀囲いがなされ、左近の桜の幹は被覆されているものの冬芽を出して逞しい。
そこらここらの木の枝や紐は結ったお神籤の白い花でその数は計り知れない。
拝殿の丹の円柱や明の春 木賊
みくじ緒ふ景壮大に宮の春 久美子
大前の橘守る雪囲 不二子
空を見上げると杜の向うから黒っぽい雲が動き初めてきている。時雨の兆しのようである。大極殿の正面に立つ。二礼二拍手一礼。
平安神宮の御祭神は、皇統第50代の平安朝を創始された恒武天皇と、第102代の平安朝最後の孝明天皇である。
明治28年平安遷部1100年を記念して創建された神宮で、大極殿や応天門を中心に、平安京の正庁、朝堂院の様式で復元され、その規模は3分の2程度ではあるが、当時の華麗な雅を偲び見ることが出来る。
蒼龍楼、白虎楼、回廊、龍尾壇などは創建当時のままに造営されたと説明されている。
当初の祭神は恒武天皇一座であったが、昭和15年に、近代日本の基礎をつくられた孝明天皇を増祀されるに当り、本殿、祝詞殿、内拝殿、翼舎、神楽殿、額殿、社務所等も増改築され、ほぼ現在の全容を整へたとの事。
白虎楼横の入口から神苑に入る。南神苑で左手奥には日本最古と説明のある市電が置かれている。しばらく行くと、寒禽の鋭い声がニタ三声あり、静寂を深めてくれる。
初松頼街騒隔つ神苑に 佐知
この辺りは、この神苑の有名な枝垂桜の集まっている所で、紅の花芽をしっかり付けた枝を美しく密に垂らしている。又近くの紅梅も蕾を膨ませ始めている。
ふとの香りは膿梅で揩スけた感じ。何れも春の近づくを知らせてくれている。
平安時代の文学書に出てくる草花や樹木の平安の苑が設けられて居て、七種の芹、薺、御行、繁縷、菘、仏座、蘿蔔が植えられ、丁寧な名札が立ててあって拝観者の注目を集め、喜ばせている。