平安神宮初詣吟行記
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平成19年1月14日  佐藤美和子
 正月14日は引鶴恒例の初吟行で今年は、平安王朝を偲ばせる日本文化の祖神を祀る平安神宮と早くから決められていた。
 
 私達は京阪電車の淀屋橋から午前8時45分発の特急で三条へ、タクシーで10時少し前には平安神宮応天門の前に着き、集合を待った。
 
 四温晴の好天気を出掛けて来たのに京都に着くとやはり時雨そうな雲行きである。が、応天門の青丹の優美さ、見上げる大きさ威容に圧倒される。
 
 一般の初詣客も多い。私達も今年始めて会う人も多く、それぞれに御慶を述べ合って新年の華やぎである。
 
祭神は遷都の皇初詣 佐知
   
初吟行花烏誠詠ひたむきに 多津子
  
応天門前にて交はす御慶かな 寿美
 
 ほぼ揃ったところで応天門を入り、身を清めて龍尾壇を上る。左に白虎楼、右に蒼龍楼が聳える。この宮の象徴的存在である。
 
冬帝の機嫌に白虎蒼龍楼 窓城
  
三寒の平安神宮朱に映ゆる 良一
  
御手洗の寒九の水を含みけり 公枝
 
 大極殿の手前の右近の橘は既に黄色い実をたわわにつけ、保護するべく簀囲いがなされ、左近の桜の幹は被覆されているものの冬芽を出して逞しい。
 そこらここらの木の枝や紐は結ったお神籤の白い花でその数は計り知れない。
 
拝殿の丹の円柱や明の春 木賊
  
みくじ緒ふ景壮大に宮の春 久美子
  
大前の橘守る雪囲 不二子
 
 空を見上げると杜の向うから黒っぽい雲が動き初めてきている。時雨の兆しのようである。大極殿の正面に立つ。二礼二拍手一礼。
 
 平安神宮の御祭神は、皇統第50代の平安朝を創始された恒武天皇と、第102代の平安朝最後の孝明天皇である。
 
 明治28年平安遷部1100年を記念して創建された神宮で、大極殿や応天門を中心に、平安京の正庁、朝堂院の様式で復元され、その規模は3分の2程度ではあるが、当時の華麗な雅を偲び見ることが出来る。
 
 蒼龍楼、白虎楼、回廊、龍尾壇などは創建当時のままに造営されたと説明されている。
 
 当初の祭神は恒武天皇一座であったが、昭和15年に、近代日本の基礎をつくられた孝明天皇を増祀されるに当り、本殿、祝詞殿、内拝殿、翼舎、神楽殿、額殿、社務所等も増改築され、ほぼ現在の全容を整へたとの事。
 
 白虎楼横の入口から神苑に入る。南神苑で左手奥には日本最古と説明のある市電が置かれている。しばらく行くと、寒禽の鋭い声がニタ三声あり、静寂を深めてくれる。
 
初松頼街騒隔つ神苑に 佐知
 
 この辺りは、この神苑の有名な枝垂桜の集まっている所で、紅の花芽をしっかり付けた枝を美しく密に垂らしている。又近くの紅梅も蕾を膨ませ始めている。
 ふとの香りは膿梅で揩スけた感じ。何れも春の近づくを知らせてくれている。
 
 平安時代の文学書に出てくる草花や樹木の平安の苑が設けられて居て、七種の芹、薺、御行、繁縷、菘、仏座、蘿蔔が植えられ、丁寧な名札が立ててあって拝観者の注目を集め、喜ばせている。
 桂の木や鬼胡桃は、既に葉を落しているが、楪は新年の飾物に用いられるだけあって、古い葉を落し新しい葉が成長してきている。1月の季題である。
 
 梛の木もあって神木でもあるらしい。葉は縦に平行脈を多数もっている。足許をふと見ると、瑠璃色に輝やく龍の玉があちこちに光を放っている。
 
龍の玉万葉歌碑に瑠璃深む 佐知
  
人疎ら神苑冬の嶋猛る 浩
  
臓梅や花の乏しき神苑に 窓城
 
 西神苑は、静寂に包まれた白虎池を中心にした庭園で、今はまだ花菖蒲の若い芽が少しあるくらいで冬ざれの庭園であった。
 
 西南の冬木立の中に、お茶席の澄心亭があり、在釜の札を掛けて、端折笠の下に受付の女性が座して、「お薄どうどすえ」と声を掛けて来そうな風情、時間があれば一服頂きたい気持であった。
 
名園の在釜の札や四温晴 久美子
  
冬晴や白虎池より巡る苑 ゆたか
  
神苑の小流れ小さき寒蜆 美和子
 
 本殿裏の鬱蒼とした樹々の間を巡路に沿って進むと、眼前に開けるのが中神苑である。西神苑と共に明治28年の造庭で、蒼龍池には天正年間の三条、五条大橋の橋脚を用いた飛石式の臥竜橋がある。
 
 睡蓮も5・6月頃には紅や黄色の花を咲かせるであろう。先を歩いていた句友3・4人が臥竜橋を渡り姶めた。
 
 私も渡ってみる事にする。円柱の石橋は高低差があり、並び方も、と見こう見状態で、寒中の池に落ちたら大変、一寸とした冒険をした様な気持になって渡り切った。
 
 先程から雨がぽつぽつと睡蓮の浮葉と臥竜橋の間に水輪を広げている。道の辺には寒椿が咲き、落ちては地面を賑はせている。
 
飛石の臥竜橋飛ぶ春著の娘 浩
  
寒禽の声に歩を止む臥龍橋 窓城
  
寒鯉や渡ってみたり臥竜橋 美和子
 
 東神苑は大正初年の造庭で、大宮人の舟遊びを想定した栖凰池を中心に、東山連山を借景にして泰平閣(橋殿)があり、瀬音を響かせて落ちるせせらぎの音、美しい松に彩られた鶴島、亀島等tがある。
 
 これをうっとり見ていると突然羽音が、して鴨が飛来、着水した。4羽が水尾を広げている。橋殿の上からは結婚したばかりの白無垢の花嫁さんを囲んで、池畔で写真を撮っているのが見え、至福の感を深く致しました。
 
楼閣を映し栖鳳池冴ゆる 久美子
  
橋殿の影を揺らせる寒の鰹 澄子
  
白無垢の花嫁眩し宮の春 不二子
 
 喧曝を忘れさせる神域を後に応天門を出て、句会場の光明寺ヘタクシーを走らせる。句会場の床の間にはお心遣いであろうか初吟行に相応しい掛軸がいやが上にも雰囲気を盛り上げてくれる。
 
君が代の掛軸かかる床の春 佐知
 
 いろいろ有難うございました。次回もまたよろしくお願ひします。
 

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平安神宮が紹介されているホームページ
https://www.walkerplus.com/article/1006771/