『道頓堀界隈』俳句吟行記・俳誌「引鶴」佐藤美和子

道頓堀界隈吟行記

平成１７年１２月１１日　　佐藤美和子

　引鶴の忘年句会が大阪道頓堀の「づぼらや」で、１２月１１日、西﨑佐知主宰を始め、新人初参加の方を含めて総勢２６名の出席を得て開催された。

　吟行は「道頓堀界隈」自由と云う事で、泉大津から参加の私達５人は１０時前凍てつくような戎橋に着き界隈を吟行する事とした。

　戎橋は今架替え工事中で、すぐ東側に木橋ができて居て、その植込にオリーブの実がたわわに生り、黒光りして橋の完成を待つ風情であった。

　下を流れる道頓堀川は安土桃山時代の土木家で、河内生れの安井道頓が秀吉に仕えて、大阪城の築城に貢献し、続いて道頓堀川を開削し、現在の大阪の発展に寄与した。

　その功績により道頓堀の名が今に残っているのだと云う。

　数年前からこの流れを浄化しようとの機運が盛り上り、諸施策が講じられて来ていて、大がかりな浚渫工事も終って、両岸の遊歩道もほぼ完成し街灯等風情を新たにしている。

　道頓堀通りは、道頓堀川の南側の通りで、江戸時代には浪花座、中座、角座、朝日座、弁天座の五座の櫓がでんと立ち、芸居茶屋が並んでいたところである。

　今は映画館、ゲームセンター、食堂ビル等に姿を変え、蟹やピェロの人形看板が目を引き、タコ焼を買う人の列もいくつもが長く、通りの中までテーブルを出して食べ物を売っている店もある。いつもの歳末風景であるらしい。

　道頓堀の北岸のドンキホーテのＵ字型の観覧車が新しい名所と聞いて行った。

　全体に黄色く塗られ、えびすタワーの表示があって、４階迄はショッピングセンター、３階に乗り場があるがまだ営業前と云う。遊歩道を太左衛門橋へ出て法善寺へ向う。

　飲食店が軒を連ねる法善寺横丁の奥に金毘羅堂があって、その前の狭い境内に長い列ができている。かの有名な全身苔の不動明王に水を掛けて願を掛ける善男善女である。

　私達もそれぞれの願い事をして一杓を献じた事は云うまでもない。入口の法善寺横丁の木の看板は、東が桂団治、西は藤山寛美の筆跡である。

　この寛美の看板には数年前の火災の跡を今に残している。正弁丹吾亭の前には織田作之助の文学碑があり「行き暮れてここが思案の善哉かな」と読める。

　黒御影石の立派なものである。近くに３基の文学碑があった。

　この辺りから千日前にかけては、昔、刑場のあった所で墓地があり、千日六坊があったと云う。

　竹林寺は６階位あるビルで、その一角にある境内には、無縁塔があり、地蔵尊が祀られている。

　その反対側には立派な九輪塔が屋根に立つ御堂があり、弘法大師と大書された大きな提灯がかかり、燭の炎のゆらめく奥の仏様は暗くてよく見えなかった。

　次は黒門市場である。ここは千日前通りの南堺筋の一本東側の通りで戦前からの魚介類中心の市場である。日曜日の１１時前とて閑散としている。

　開いている店先では絞められたばかりの河豚がまだ息をしている。捌かれたばかりの大きな虎河豚が腹を上にして何匹も店頭に並べられている。

　１匹何万円もの値札がっいている。正月用の数の子や棒鱈、伊勢海老やずわい蟹も沢山売られていた。道頓堀、千日前、黒門を２時間近く吟行して寒さを覚へ、ふと茶房で暖をとりミルクティにほっと一息つく事ができました。

　句会場へ急ぐ途中、窓城さんに出会い、えびすタワーの観覧車に乗って写真を撮って来られたと聞き、私達も行って少し待つだけですぐに乗れたのは幸運でした。

　暖房もされた観覧車で、乗ったゴンドラが１８０度回転、向きを変えると総窓越しに南大阪一帯と果ては和泉山脈まで、凍空の下に一望する事が出来ました。

　時折日も射して、何時の間にか地上７７米程の上空に達していた。遥か下の道頓堀川の上を、ゆりかもめが数羽飛んでをり１５分間の空中散歩を楽しく終えました。

　冷たい風の吹く吟行でしたが、明るい座敷で河豚の会席料理を頂き、佐知主宰を中心に和やかで楽しい納め句座となりました。有難うございました。

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道頓堀川が紹介されているホームページ　　https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000010856.html　